シークレット・ガーデン
理亜はこの頃、夕方になるとグズって泣き出す。
結構、激しい泣き方なので、腹痛でも起こしたかと心配になったけれど、赤ちゃんの『夕泣き』は割りによくあることらしい。
真彩は理亜をおんぶひもでおんぶしながら、夕飯のシチューを作っていた。
おんぶすると、背中で大人しくしてくれるので、夕方くらいから、おぶってしまう。
「…あー肩が凝るう。
でも、理亜っち、抱っこしてちゃ、何も出来なくなっちゃうもんなあ…」
時々、手を休めては、自分の肩をトントン叩く。
真彩は肩凝り症じゃないけれど、それでも、ずっしり肩にくる。
おんぶひもは真彩の母が昔、赤ちゃんだった真彩をおんぶする為に使っていたという年代物だ。
紺色の布地は色褪せてあちこちシミも残っているけれど、なかなか使い勝手がよかった。
母は綿の入った霜降りグレーのねんねこも実家の天袋から引っ張り出して、真彩に届けてくれた。
これもすごく重宝していた。
こんなねんねこなんて、今時なかなか売ってない。
PM5:45。
居間のテーブルに置いた真彩のシャンパンオレンジ色のスマートフォンが鳴る。
(あ、司だ…)
調理する手を止め、真彩はスマホに近付く。
メールは、やはり司からだった。