シークレット・ガーデン
歯固め石と亭主関白


乳首をくわえさせようとして、必死な真彩に反抗するかのように、理亜は小さな口を固く閉じてしまった。


お腹は空いているはずなのに。


つぶらな瞳で、母親の真彩を見あげる。


赤ちゃんは意外にずっしりと重い。

真彩の左腕が痺れてきた。


いつまでもソファで授乳スタイルを取り続ける真彩を見て、光俊が余計なことを言う。


「もう、理亜、哺乳瓶の方がいいんじゃね?
もういいじゃん。
そんな母乳に拘んなくてもさ。
俺、哺乳瓶、消毒してミルク作ろうか?」


光俊が機嫌良く言うのに、真彩は完全に無視をする。


このところ、細かいチリのようなストレスが溜まっている真彩に反比例するかのように、光俊の機嫌は良くなっている。


真彩のストレスは、鹿児島からの来客のせいだ。


先週の週末から、光俊の母が単身、鹿児島から上京し、一週間、夫婦のマンションに滞在し、昨日帰った。


初節句の雛祭りの時期でもあったけれど、理亜が小さすぎて、何も分からないから、それはまた来年やることにして、お食い初めだけをやった。


理亜は、真彩の親にとっても光俊の親にとっても、初孫だから、鯛の塩焼きが付いた立派な祝い膳がが食卓に並んだ。


真彩の母が仕出し屋に頼んでくれたものだ。








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