シークレット・ガーデン
そのくせ、自分の母親が壁一枚挟んだ隣の客間で寝ているのに、光俊は夜、せがんできて、真彩は困惑した。
「声聴かれちゃったら、恥ずかしいもん。
抑える自信なあい!」
真彩がいうと、さすがの光俊も大人しく引き下がった。
光俊の母のおかげでしばらくの間、真彩は『夜の義務』から解放された。
いい事と言えば、それくらいだ。
この頃は、粉ミルクと母乳が半々くらいの混合にしていた。
司の4歳の娘は「渚」という。
渚を保育園に預け、飲料水メーカーの営業マンとして、得意先を回る多忙な日々の司。
入社5年目のエリアマネージャーとして、人をまとめる責任も担っている。
彼のシングルファザーぶりは、真彩の胸を打った。
保育園は延長保育があっても午後6時半まで。
司の仕事は定時で上がれることなど稀だという。
通勤時間は電車で片道1時間ほど掛かるといい、保育園の迎えはベビーシッターに頼んでいた。
シッターは、市が立ち上げた子育て支援制度に登録していた近所に住む50代半ばの主婦で、3人の子供を育てあげた経験があるという。