シークレット・ガーデン


耳に響く司の「真彩」と呼ぶ低い声。一瞬、エッチな気分になってしまい、真彩は一人で赤くなった。


6年前、気まずくなって別れた二人なのに。



司と話しているうちに、何人もの女が彼に救いの手を差し伸べていることがわかってきた。


保育園への朝の送りで、渚の手を引く司の姿を見かけた母親達は、彼に妻がいないことを知ると、黙ってはいなかった。



『周りのママ達もいい人ばっかだよ。
去年の親子遠足の時なんて、何人かで俺と渚の分まで弁当作ってくれて。
渚がお遊戯会で使うスカートみたいなやつ、うちの分まで縫ってくれたママもいたし。

保育園て、シングルマザー結構いるけど、俺みたいのは、珍しがられる。

先生からもしょっちゅうメール来るし。
あ、渚のことでだよ。

俺、連絡ノート見るの、つい忘れちゃうから」


司は明るく言う。


司の話す言葉には、独特のイントネーションがある。

それは南国・宮古島のもので、今も変わらず、真彩の耳に心地良かった。


司が言うには、宮古島でも、若い人たちは本土の人間が聴いてわからないような沖縄方言は、あまり使わないという。



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