シークレット・ガーデン
まだまだ夫は凝りません
「なんかさ、真彩、夕方よく電話してねえ?」
晴れの日曜日の午後。
ベビーカーに理亜を乗せ、三人で公園を散策している時、光俊が言った。
「えっ……」
真彩はどきりとする。
先週の水曜と金曜。
光俊がたまたま夕方、会社の電話から真彩の携帯にかけると通話中だった。
夫の会社から着信が入ったことに気付いた真彩は、司との会話を早々に打ち切り、折り返し光俊の携帯に電話した。
たった二度だけなのに、『よく』となってしまうのが、光俊らしい。
「……あ、ああ。藤沢のお母さんよ。
この頃、夕方に電話してくるの。
理亜元気?って」
真彩は咄嗟に嘘をついた。
「そっかあ。やっぱ、理亜が可愛いくて、仕方ないんだなあ」
ベビーカーを押す真彩の隣で、
光俊が柔和な笑顔を見せた。
理亜は4ヶ月を過ぎた。
ぷくぷくとよく肥えて、健康そのもの。
ベビーカーに乗せて歩いていると時々
「まあ、可愛い赤ちゃん!」と見知らぬおばさんに声を掛けられる。
表情も豊かになり、色んなものに興味を示すようになってきた。