シークレット・ガーデン
光俊は、子供が生まれた今でも、ベッドの上だけではなく、真彩と恋人同士のように過ごす時間を欲しがる。
それは、交際期間が短かったせいかもしれない。
車の中でも、光俊は真彩にベビーシートのある後部座席ではなく、助手席に座って欲しいという。
車はコンパクトカーだから、後ろにいても近いのに。
真彩は、理亜が気がかりなので、ベビーシートの隣に座りたいのだが、そうすると光俊がしょっちゅう、後ろを気にするので、危なくて仕方ない。
しぶしぶ、前に座ることにした。
理亜が愚図ったり、授乳の時だけ後部座席に移動する。
「レストランの情報、帰ったらネットで調べてみようか?」
光俊の右手が、ベビーカーを押す真彩の左手薬指のリングにそっと触れた。
ごく自然な動作で。
光俊の手の温かさを感じる。
もちろん、光俊の左手薬指にも、真彩と同じリングがはまっている。
おそらく真彩以上に、この時間に光俊は幸せを感じている。
彼の真彩を見る目は、最愛の女を妻に娶ることが出来た喜びに溢れていた。
「…うん」
笑顔で頷いた後、初めて少しだけ、罪悪感が真彩の中で芽生えた。