シークレット・ガーデン
7階建て3LDKの新築マンション。
落ち着いたレンガ色の外観に、視界を遮るもののない堂々たる南向き。
真彩たちの住まいは三階の角部屋だ。
もちろん、エレベーター、駐車場完備。
最寄りの駅から徒歩12,3分と交通の便もいい。
結婚二年目の真彩と光俊には、申し分ない。
家賃は10万を超えるけれど、ほとんどを光俊の会社が負担してくれる。
彼の給料はそこそこの額だし、経済的には割りと恵まれていた。
だから、真彩は妊娠8カ月に入ったのを機に会社を辞めてしまった。
真彩の仕事は、医療用品の営業。
取り扱う商品は様々だ。
医療機器に取り付けるプラスチック性のチューブや、採血管に始まり、腰痛ベルトや補聴器なども取り扱う。
毎日社用車を運転し、得意先の病院や介護施設を回って自社製品を納品した。
新製品があれば、パンフレット片手に説明をして、担当者にお願いします、と笑顔で頭を下げる。
時には重量物や山のような納品を真彩がしなければならない日もあった。
そんな時は車から台車を取り出し、荷物を載せて運んだ。
服装はブラウスにジャケットを羽織り、膝丈スカートにヒールのパンプスが定番だったから、そんな格好で台車を押すのは、最初のうちはちょっと恥ずかしかった。