シークレット・ガーデン
真彩の母親は、娘の教育に熱心だった。
女の幸せは結婚で決まるから、どこに出しても恥ずかしくないように育てなければ、と真彩の父に言っていたのを聞いたことがあった。
そのくせ、歳の離れた弟の貴文には大甘で、やりたいようにやらせていた。
5月の夜の街。
暑くも寒くもない一年で一番過ごしやすい季節。
頬を撫でる風が心地よかった。
駅に通じるスクランブル歩道橋を歩きながら、腕を組んで、真彩は光俊に思い出話をする。
「バス降りても、すぐに家に帰りたくないから、JRの駅前の植え込みのわきに座って友達とかにメール打つの。
そうすると、よく男の人に声掛けられるの。
お茶しようよ、とか。ドライブしない?とか。
いきなり、メアド訊いて来る人もいたし」
へぇ、と光俊は素っ気なく返事を返す。
こんなことにすら、軽く嫉妬しているのだ。
「私の学校、その当時だって珍しいセーラー服だったから。
余計目立ったのよね。
男の人って、セーラー服好きでしょ…」
そう言った途端、光俊は真彩の腕をグイッと引き、半端じゃない食い付きを見せた。