シークレット・ガーデン
「花をプレゼントさせてよ。
記念日だから」
光俊が、道路を挟んだ向かい側に花屋があることを真彩に目で知らせる。
「やっぱり、薔薇かな?」
光俊は左手で前髪を掻き上げて考え込む仕草をし、広い額が丸出しになる。
車のヘッドライトに照らし出されたその瞳の邪気のなさに、真彩の心は咎めた。
……結婚記念日なのに。
前の彼氏との行為を思い出すなんて……どうかしてる……
真彩は、夫の腕にぎゅっとしがみついた。
「….うん。私、紅い薔薇がいい。かすみ草もあったら入れて欲しいな!」
光俊が返事の代わりに微笑む。
二人は手を繋ぎ、横断歩道のない道を、車の往来を見ながら、横切る。
薔薇が少し枯れてきたら、ポプリを作ろう……
真彩は思った。