シークレット・ガーデン
「私、そろそろ理亜のところに行くね…お休み」
光俊のお休み、と言う小さな返事を背中で聴いた後、廊下を挟んで向かいの部屋のドアを開ける。
暗闇の中で、ドレッサーに置いた真彩のスマホの着信ランプが点滅していた。
理亜は胸までちゃんと布団を掛けて、あどけない安らかな寝顔を見せていた。
閉じた目の長いまつ毛とふっくらとした頬が愛らしい。
まだ小さな赤ちゃんの理亜。
『一緒に札幌に行くよ』と言ってあげたかった。
ちょっとわがままなところはあるけれど、光俊は、素晴らしい夫なのに。
こんなに自分を愛してくれているのに。
自分は自分が一番大切なんて……
自己嫌悪になった。
布団に潜り込む前に真彩は、スマホを手に取る。
やはり画面には『砂川司』とあった。
司からのメールは、明日読もう…
真彩はそう思った。
昨夜から理亜は、元気がなかった。
食欲もなくて、朝も少ししかおっぱいを飲んでくれなかった。
ふう、と真彩は溜め息を吐く。