イケメンルーキーに恋をした
「3年の言うことが聞けないの? なんだよ、おまえなりのバスケって!! 俺らの今までのやり方に文句があんの!?」
日野先輩が、田尾くんのユニフォームの胸倉を掴む。
「日野先輩!! やめてください!!」
あたしが駆け寄って止めに入っても、ふたりは間近で睨みあって、チビのあたしなんて視界にも入っていないようだ。
「黙ってないで、何とか言えよ」
日野先輩が、低く太い声を出す。
でも、田尾くんはずっと黙って先輩をジッと見ているだけで何も答えなかった。
「ちょっと!! ふたりともやめてくだ……」
あたしが無理矢理ふたりを引き剥がそうとしたら、急に田尾くんが先輩の手を振りほどき鋭い視線をサッと外し体育館の外に出ていった。
「田尾っ!!」
怒りのおさまらない先輩の声が、キンと耳を貫く。
クソッと、言葉を吐き捨てた先輩は、足元に転がっていたボールを強く蹴って後頭部を激しくかきながら、田尾くんとは逆方向に体育館の外に出ていった。