イケメンルーキーに恋をした
あたしと先輩は、放課後部活に向かう前に、彼の教室に訪れた。
1年生しかいない校舎なのに、ひそひそと身を屈め、先輩と共に彼のクラスを覗き見る。
HR終了後の教室は帰りの支度をする生徒でざわついていて、その中に友人数人と話す彼の姿を見つけた。
「先輩。いましたよ、彼」
廊下側の窓から腰を折って目だけを覗かせ、隣の先輩に言う。
「アイツ本当に1年か? 他のヤツらに比べて妙に大人びてると思わない?」
先輩は鼻の下を伸ばすようにして教室の中を覗き込見ながら、見つかりそうになると顔をサッと下ろして陰に隠れる。
そんなあたし達を見て、教室から出てきた1年生達が不審そうに少し距離を取ってヒソヒソと話しながら帰って行く。
あたしは何だか恥ずかしくなって咳払いをしながら、体を真っ直ぐ立て、意味もなく膝上の紺色のスカートを整える。
先輩もあたしに続いて体を立てると、肩に掛ける黒のエナメルバックをジャンプして肩にかけ直した。