イケメンルーキーに恋をした
「行くか」
先輩がニッと笑いあたしを見下ろす。
あたしは、唇を噛みしめコクンと頷いた。
「やぁ、田尾くん。お元気ですか?」
先輩は教室に入るなりすぐに右手を上げ、喉を開いたアルトのトーンで彼に声をかけた。
おかしな先輩の登場に、一緒に話をしていた友人が少し引き気味で顔を引きつらせる。
彼も、「またおまえらか」と言わんばかりに頬を引きつらせ盛大にため息をついた。
あたしと先輩は彼の机の前まで行き、ニコニコと明らかに作り笑いだとわかる笑顔を作る。
すると彼の友人たちは、あたし達に関わるべきではないと思ったのか、スクールバックを脇に抱え「田尾、また明日な~」とそそくさと帰って行ってしまった。
彼は友人たちに手を振ることもなく、スクールバックに筆箱とスマホを投げ入れる。
「田尾くんさ、放課後のんびりと友達と話をしてるってことは、何も部活入ってないんだよね?」
先輩が話しかけても、彼は無視。