イケメンルーキーに恋をした
あたしは不格好に壁に張り付いた自分のバカさに呆れ、首の後ろをポリポリ掻きながらその場を去った。
嫌な場面を見てしまった。
少し頭を整理して色々計画を立てようとしてたのに、余計頭がこんがらがってしまった。
あたしの、アホ……。
あたしはこのまま部屋に帰ることも出来ず、さっきの花壇にまた腰を下ろす。
さっきまで癒しでしかなかった虫の鳴き声が、耳触りでしかたない。
空を見上げても、星も美しいとも思わなくて……。
惨めだ……。
ジャリ……。
遠くで聞こえた足音に、冷や汗が流れる。
気づかれないように顔を背け息を潜めたけれど、街灯に少し照らされたあたしは、易々と見つかったしまった。
「何やってんすか?」
田尾くんの小さな声が、虫の鳴き声にかき消される。
「……別に?」
あたしの声も、虫の声に負けた。