イケメンルーキーに恋をした


「何今にも噛みつきそうな勢いで見てんのよ」


「ギャッ!!!!」


ボソリと耳元でささやかれ、思わず酷い声を上げてしまった。


それは体育館中に響き渡り、男女みんなが一斉にあたしを振り返る。


あたしはそっとファイルで顔全部を隠し、肩まですくめた。


「全く……。分かりやすいにも程があるよ、あんた」


あたしのおかしな行動に、さおりが呆れて言う。


「こんなに田尾くんのこと好きなのバレバレなのに、勇気出せないなんて」


「だ、出せるわけないじゃん!! もしそれでフラれたらどうする? あたし、もうマネージャー出来なくなるじゃん」


まだ顔をファイルで隠したまま、さおりに小声で叫ぶように言う。


「あ! 好きなの認めた!!」


さおりがあたしを指差しケラケラ笑う。


あたしは一気に顔に火がついたように暑くなり、毛穴という毛穴から汗が噴き出してきた。





< 164 / 323 >

この作品をシェア

pagetop