イケメンルーキーに恋をした
みんなフリーだとわかっていて、先輩は手っ取り早く”いるヤツ“に手を挙げさせる。
だけど、今年も残念ながら誰も手を挙げなかった。
「…………」
ふと、何か視線を感じて恐る恐るその方に目を向けると、田尾くんが手に持っていたプリントで鼻まで隠してこちらを見ていた。
な、なに……?
あたしが少し体を逸らして不審に見ると、田尾くんはあたしの隣に近寄って、プリントで口元を隠しながら耳打ちしてきた。
「いないんすか?彼氏」
ドキン……!!
ただ聞かれただけなのに、心臓が大きく跳ねる。
急に緊張してきて何も答えられずにいると、田尾くんはあたしに答えを求めるようにジーッと見てきた。
「い、いないよ!! な、なに?何か文句でも?」
もっとスマートに答えられればいいのに、どうしても極度に緊張するとどもってしまう。
顎を突き出して目を泳がせるしか出来なくて、全然可愛くない……。