イケメンルーキーに恋をした


午前中の仕事を終わらせ、あたしはひとりテントを出た。


汗をかいたあとに風に当たると、少し寒く感じる。


田尾くん、本当に来なかった。


そんなにあたしからたこ焼きを受け取るのが嫌なの?


ああ……。


これからの時間ひとりでどうやって時間潰そうかな。


さおりと一緒に回れたら楽しいのになぁ……。


さおり、岩石先輩と楽しく過ごせたのかな。


「……あ」


何となく校舎をぶらついて前を見たら、文化祭の企画で手を繋いでいる日野先輩とあやねちゃんカップルと遭遇した。


サッと目を逸らしたけれど、日野先輩に声を掛けられ下手に微笑んだ。


「あれ?ひとりなの?」


日野先輩に聞かれ、あたしはコクンと頷く。


「午前中クラスの出し物でたこ焼き売ってたんですけど、もう交代の時間で。さおりは午後からの係なんです」


口のへの字に曲げて言うと、日野先輩は「寂しいな」と肩をすくめた。




< 220 / 323 >

この作品をシェア

pagetop