イケメンルーキーに恋をした


口の端にソースを付けた田尾くんが、満足そうに口を動かす。


食べ終わるとまた口を開けて来て、あたしの手も、田尾くんの口もソースまみれ。


こんなに子供っぽい田尾くんは初めて見た。


やっぱり、年下だ。


「先輩も食ってみて」


口元のソースを舌で舐めとった田尾くんが顎でたこ焼きを指す。


あたしは一つしかないつまようじで、たこ焼きを一口頬張った。


これって、関節キス、だよね……?


緊張と平然を装うと必死になるあまり、たこ焼きの味が全くしなかった。


力を入れて飲み込んだせいで、空気まで飲み込んで食道が苦しくなる。


「先輩、口にソースついてるし」


ハハハと田尾くんが笑う。


慌ててソースを舐めて、あたしも言い返す。


「た、田尾くんだってソースだらけだし」



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