イケメンルーキーに恋をした
田尾くんは肩に掛けるスクールバックを少し後ろ側にやり、両手をポケットに突っ込み、短く「いや」と言った。
「興味ないんで、帰ります」
また首をグイッと前に出して、素っ気なく会釈。
「……あ」
そして、渡り廊下を歩き、雨の降るグラウンドへと歩いて行った。
「ちょ!! 今のが例の田尾くん!?」
少し遅れてやってきたのは、女バスのさおり。
先輩と同じ白のユニフォームを着て、彼の消えたグラウンドを背伸びをして覗いていた。
「うっわ。背が高くてカッコイイね」
イケメンに出会えたことが幸せなさおりが興奮して明るい声を出す。
「あ!! でも、岩石先輩には敵いませんけどね!!」
さおりは、ニヒッと先輩に向け無邪気な笑顔を向けた。
先輩はさおりに向かい口角を上げ、満足そうに頷いて、もう田尾くんの姿のないグラウンドを見る。
雨が激しく降っている。
鋭い雨が刺さる度に、グラウンドの土が幾度も跳ねた。
痛い……。グラウンドの土が、そう言っているように聞こえた。