イケメンルーキーに恋をした
あたしは、田尾くんより先に卒業する。
校内での田尾くんを見れなくなると思うと、涙が出そうだ。
何をしているのか、誰と一緒にいるのか。
何人に告白されたのか……彼女が出来たのか。
何一つ、田尾くんの情報が入って来なくなる。
そんな生活、何にも楽しくなさそうだ。
「……あ、先輩」
ちょうど岩石先輩が体育教官室から出てきたので、あたしは急いで駆け寄った。
「なんだ、神村。まだ制服のままでどうしたんだ?早くジャージに着替えてこいよ」
先輩が教官室の階段から降りてきて、あたしの前に来る。
「あ、はい。これを渡したらすぐに準備してきます」
あたしは、「お誕生日おめでとうございます」と、小さな紙袋を先輩に差し出す。
「去年はさおりと一緒にでしたけど、今年は別々です」
ヘヘヘと笑い、更に先輩に袋をグイッと差し出した。
「神村が選んでくれたの?」
紙袋を受け取った先輩が、なぜが少し驚いた表情。
「はい。さおりと田尾くんも一緒にいたんですけど、選んだのはあたしですよ。気に入ってもらえるといいんですけど」