イケメンルーキーに恋をした


あたし達の周りには、見物客が増えて行った。


その輪の中で、辛そうにため息をついて前髪を握る先輩と、そんな先輩を見て涙を流すあたしと……。


逃げ道は、どこにもなかった……。


「市原には、俺から話とくから……」


そう言って、先輩はあたしを覆うようにして肩に手を回し、群がる人ごみを分けて進んだ。


あたしは顔を覆って、嗚咽をこぼすだけ。


辛い、辛い、辛い……。


どうするのが一番よかったの?


さおりにどう言ってたら、こんな事にならなかったの?


さおりに本当のことを言えないまま、先輩に返事も出来ないまま、ただあたしは、先輩によって守られた……。


泣きたいのは、先輩の方なのに……。




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