イケメンルーキーに恋をした
何か話さなきゃ。
前進するんだろ。
俯いてちゃダメだ。
「さおり……」
勇気を出して顔を上げ声を出した。
タイルで覆われたトイレは、あたしの声をキンキンと跳ね返しこだまする。
あたしはクルリとさおりを振り返って、唇を噛んだ。
「さおり……話が……」
「ごめん。聞きたくない」
さおりはあたしの目を見ることなく、眉間にシワを寄せてトイレから出ていってしまった。
“聞きたくない“
悲しむような、さおりの乾いた声。
さおりが走り去っても、冷たいタイルの壁が、さおりの声を何度も何度もあたしの耳に反射して送り込んだ。
やっぱり、ダメか……。
あたしがどんなに頑張って努力しようとしても、さおりがそれを受け入れてくれなきゃ意味ないもんね……。
もう、前みたいに仲直り出来ない程のことを、あたしはしてしまったんだ……。