イケメンルーキーに恋をした
グッと上を向くと、田尾くんは腰を折ってあたしに顔を近づけてきた。
温かくて柔らかい唇が触れる。
一瞬の、唇と唇が触れる程度のキス。
それだけで全身が一気に熱くなって、さっきよりも鼓動が速くなる。
幸せで、自然と笑みがこぼれてきた。
「なに笑ってんすか」
そう言う田尾くんも、口元が緩んでいる。
そして、気が緩んだのか、田尾くんはくしゃみをして鼻をすすった。
あたしは田尾くんからもらったばかりの真っ赤なマフラーを取り出し、田尾くんに巻いてあげる。
「これはミニ先輩のものなのに」
少し膨れる田尾くんは、やっぱり子供っぽく見える。
今までの大人っぽさはどこに言ったんだろう。
「田尾くんの体温でマフラーが温まった頃、返してもらう」
あたしが言って笑うと、田尾くんは「は?」と言って笑って。
「うっわ。そんなことするんすか。最低」