イケメンルーキーに恋をした
「先輩」
部活に戻り、柔軟運動を始める先輩の横で、あたしはデータファイルを持ちながら声をかける。
先輩は体を動かしながら、あたしに「ん?」と顔を向けた。
「クラスマッチで田尾くんを見た時、すごくキレイなフォームで驚いたんですけど、まさかそんなにすごいプレイヤーだったなんて思いませんでした」
「確かにな」
先輩は柔軟をストップして、真剣な表情で頷いた。
あたし達は部活に戻る前、どうしても田尾くんの過去が気になって先生に聞いたんだ。
『田尾はな、中学では有名だったんだ。田尾が入学するまで弱小だった学校が、アイツの存在で一気にトップまで上り詰めた。誰もがアイツの将来に期待を持っていたんだが、ちょっとした事件が起こって、アイツはバスケから遠退いて行ったんだよ』
先生の切なげな声が、まだ耳に残っている。