続・捕らわれ姫




「悪い。妹が少し人酔いしたみたいだ。
 化粧室に連れて行ってくれないか?」



言われて、愛華さんは兄様をジッと見た。




「分かったわ」



少しの間の後、小さく笑うと、彼女は私の手を取った。

それにつられて見上げると、


「手が冷たいわ。
 あちらで少し休みましょう」



綺麗な笑みを作り、私の手を引く。




「あの…」

「話は後。

 そうね…。私も聞きたいことがあるから、ゆっくりお話しましょう?
 でも、まずは体を温めなさい。顔が真っ青よ」



こちらを見ることなく、先を歩く愛華さん。

私は、黙って後ろをついて行くしかなかった。














後ろを振り向けなかったのは、先生の視線を感じたから。



………私は弱虫だ。


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