続・捕らわれ姫
ゆっくりスーツから手を放し、体を離す。
顔を上げると、先生は私を無表情で見下ろしていた。
「圭一さん…? その方は?」
先生に近づき、不思議そうに私を見て先生の袖を掴むチエさん。
先生は一瞬の間を空け、何事も無かったように、
「ヒールが絨毯に引っかかったみたいだ」
一言言うと、そのまま私の前からいなくなった。
何が、おきたのか……
「さくら」
呼ばれても、振り向けない。
そんな私に、兄様はゆっくり近づき、優しく抱き締めた。
「……帰ろう」
言葉が出ない。
でも、心の中でずっと叫んでる。
『先生―――…』
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