続・捕らわれ姫




私が時計を見てる間に、関口君はバケツを持って先に行ってしまった。


私も慌てて追いかける。




「ああー腹減った!

 なんか食って帰ろうぜ?」



バケツの水を流し、私の手の雑巾を取り上げると、バシャバシャと洗い始めた。



「関口く…」

「裕也」


私の声を遮るように、関口君は声を被せた。



彼はゆっくり私を見ると、


「俺の名前、裕也って呼んで」


「ゆうや…?」


「そ、裕也。
 俺も……さくらって呼ぶから」


そう言ってにっこり笑うと、雑巾とバケツを持ち準備室に向かってしまった。



私は、その後ろ姿をただ見送るだけ。




……その時、彼の耳が赤くなっていたことには気付かなかった。


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