tender spring
知らない人なのに、悩んでる姿がなぜか可愛く見えて思わず笑ってしまった。
「ん?」
横にいた俺を見て首をかしげると、自販機から一歩下がって「どーぞ。」なんて言った。
「あ、いや。俺は後でいいから。」
別に急いでるわけでもない。
葉太さんが待ってるけど、この子に譲ってもらわなくても大丈夫だと思う。
葉太さんそんなに心狭くないし。
「そうですか。何にしよっかな…」
女の子が財布を持っていた手を下に下ろしたときだった。
チャリンチャリン、と音がして女物の財布から小銭が地面に散らばる。
「あら、あらら…落ちちゃった。」
随分のんびりしてる子だな。