弱虫の狼は月に叫ぶ**
0話 転校生
「蒼はさ好きな人いないの?」

机に突っ伏すと、聞こえてきたワード。

「え、私?」

思わず顔を上げる。

朝のHR前の穏やかな時間。

突然言われた言葉に、慌てた。

「うん。蒼、好きな人いないのかなあ……って」

いる?とばかりに笑顔で問われる。

奈緒ちゃんの目力は恐い。

「いるわけないじゃん」

私は慌てて首を横に振った。

だいたい、まだ入学してから三ヶ月しか経っていない。

皆だって好きな人なんて、できていないはず……。

「私はねー、いるよー」

突然割って入ったもう一つの声。

それにつられて、

「え?なになに、コイバナ?」

皆が私の席を囲む。

「実は私もいるんだよねー」

奈緒ちゃんが言う。

「えええええええええっ?!」

思わず叫ぶと、皆に笑われた。

「当たり前じゃん。だいたい、4組結構イケメン揃いだよね」

「うんうん。一組とかひどいよね」

「4組で良かったぁ」

コイバナで盛り上がってる話題を忘れ、ふと集まってる人数を数える。

14、15……16…………。

全員揃ってんじゃんっ!
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