弱虫の狼は月に叫ぶ**
コイバナって恐ろしい。

まさか、クラスの女子が全員集うとは。

物珍しそうな男子の視線を直に受けてなお。

まるで動じず話をする皆の度胸に拍手したい。

そして帰って欲しい。

だって私、恋なんてしたことないし。

話題についていけないのは明白だ。

ため息をつく。

まあでもそういう人だって一人や二人いるはずで……。

「好きな人いる人挙手〜」

奈緒ちゃんの声に。

瞬間、全員が手を上げる。

「嘘だろー……」

瞠目し。

力なく呟いた。

なんなんだ、この団結力。

「ねえ。蒼本当にいないの?」

「うん、いないよ〜」

前髪をかきあげると、

「蒼本当クールだよね〜」

皆の声。

「サンキュ」

別に、嬉しくない。

「じゃさ、ましな人とかいないの?」

一人の声に、

「うーん」

考えて見たが、答えは出ない。

「あ、そんなことよりさ」

「誤魔化さないっ」

あ、読まれた。

しょうがないじゃんか。

いないものはいないのに。

私だって好きな人、できたらいいなあとは思ってる。

でも、できないのだ。

どうしようもないことだ。
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