ボクの瞳に映る一億の友達
赤い男
母がいつも言ってた。
泣いちゃダメ。
怒っちゃダメ。
大きな声で笑っちゃダメ。
ダメダメダメってそればっかり。
けど……、みんなボクの為だったんだね。
ゴメンね、ママ…。
ボクは…
気付くのがちょっと遅かったみたい。
************
― ミ ツ ケ タ ―
男の言葉に戦慄が走った。
同時に母の言葉を思い出した。
『アリア、心を沈めて。でないと…』
見付かってしまうから…
ああ…見付かってしまった。
あの男はきっと見付かってはいけない相手。だって、こんなに血がざわめくもの。
「…逃げようエマ、速くっ!」
「え?なによ!聞こえないわ!」
もたつくエマの手首を力いっぱい掴み、風の渦からもがき出る。
逃げなければ…。見付かってはいけない。頭の中にはそれしかなかった。
がむしゃらに走り、エマの手首の感触だけを感じている。
ボクはただ、あの場所を目指していた。