ボクの瞳に映る一億の友達
今夜はなぜか月明かりが眩しい。闇の中でひっそりたたずむ廃墟も、神秘的に光っていた。
「ハア、ハアハアハァ…ね、何なのよ一体!デートの誘いにしては強引じゃないのよ!!!」
フン!とエマは不満げにそっぽを向いてしまった。
「ハアハア、ゴメン。けど…アイツに見付かりたくなかったんだ」
「アイツ?…そー言えばさっき誰かいたわね。見掛けない人だったけど、アンタ知り合いなの?」
いや…知らない。けど知っている様な…。もう頭の中がグチャグチャで分からない。
風が強い。ひび割れたガラスは容赦無く叩かれ、建物ごと軋む。
「ねえ、こんな所いたってしょうがないわ。帰りましょ?」
「あ、うん…ゴメン。そうだね、帰ろ」
言ってから思い出した。ボクにはもう帰る所なんか無かったんだ。
「もう、アンタはゴメンばっかりね」
エマが笑う。
ホントだね、ボク……謝ってばっかりだ。