ボクの瞳に映る一億の友達
━━ バァァーン ━━
「!!」
扉が勢いよく開いた!
廃墟のカビ臭い空気が掻き回され、生ぬるい外気と混ざり合う。
むせ返るボクらに近付く靴音は、酷く冷たかった。
― ミツケタゾ シュウマツノツバサ ―
「……ぁ………」
息が出来ない。
声も出ない。
身動きも取れないまま、ただ男の濁った瞳に飲み込まれる。
「ち、ちょっと!アナタさっきから何なんですか!?ひとの事追い回して!」
エマは男との間に入り、食いつく様に挑みかかった。
「これ以上纏わり付くと人を呼びますよ!それがイヤなら…」
― ジャマダ コムスメ ―
「キャッ!」
「エマァッ!!」
衝撃は、目に見えない力で彼女を壁に叩き付けた!ぐったりと倒れるエマに、男は残忍な笑みを浮かべ近寄る。
コ ロ サ レ ル
動かなかった足がウソの様に…風に溶けた様に素早く男に近付き、渾身の力で押さえ込む。
― エマに触るな! ―
男は驚きと歓喜の表情でボクを見た。そしてもうエマへの興味も失せていた。
― オオ、ヤハリオマエハ ワレラノモトメルツバサ ―
強い力がボクを拘束したのが分かった。男の爪が腕に食い込み、同時に風の檻が何重にもボク達を巻いている。
逃げ切れない。
けれどこの手を放す気は無かった。エマを無事に帰すまでは。
背中が…焼ける様に熱い。
「ア、アリア…」
エマが目を覚ました。恐怖に顔を強張らせている。
大丈夫だよ、ボクが守るから…。