ボクの瞳に映る一億の友達
家族
町は閑散としている。
規則正しい家並みは皆まだ暗く、冷たい朝露に濡れていた。
朝市が始まる前の、朝もやに包まれたこの時間の町並みが、ボクは好きだった。
今日も朝早くから開いたパン屋で安いパンを買い、早々と市に店を出した老婆からトマトを貰った。少々傷んでいたが、パンに挟んでカバンに詰め込む。
もうしばらくすれば通りも活気に満ち溢れ、人々の声が響く。
その前に町を離れ、高台の廃墟へ向かう。誰が来る事も無いこの場所で、長い休日を消化して行く…それがボクの一日だ。
家族に振り向いて貰えないのは悲しいが、一人が嫌いなわけでも無かったので、ココは唯一ホッと出来る場所でもある。
ボロボロのソファーに身を沈め、サンドイッチをかじる。
穴の開いた天井から白い朝日が注ぎ、今日もキレイだった。
世界がこんなにも静寂で、美しいだけだったなら、ボクは苦しまずに生きて行けたんだろうか。