ボクの瞳に映る一億の友達
『ママァ~背中がイタいよう』
『大丈夫…ママがついてるわ』
『うあ~ん!』
『アリアお願い…泣いてはダメ。心を沈めて…』
『うあ~ん!ママァ~!!』
お願い…
でないと見つかってしまう……
「う、ん…」
目を開けると、周りは夕焼けの色でいっぱいだった。
手にしたサンドイッチはパサパサに乾き、干からびたトマトは床に落ちている。どうやら随分寝入ってしまったらしい。
今から家に帰るとなると、大分暗くなってしまうだろう。急いで帰らなければ。
その時…。
「痛っ!」
突然、背中に痛みが走った。裂ける様に広がり、じわりと熱い…小さい頃から繰り返し続く感覚。
「また…なの…」
久しぶりの痛みに驚いたが、もうあの頃の様に泣き叫んだりはしない。
七年前…母の葬儀で痛みに耐えられず泣いた。
まだ五才だったボクは、母の死に涙する事も出来ず、痛みと恐怖にただ泣いたのだ。
「……ママ…」
夕闇が近付いている。
夢の片隅で聞こえた母の声は、海風に溶けて心に届く前に消えた。