ボクの瞳に映る一億の友達
「ただいま…」
薄暗い玄関は、しんとしていた。
こんなに暗くなって帰宅したのだ。父はさぞ怒っているだろう。
明かりの漏れるリビングを覗くと、弟が一人で遊んでいる。
「あ、アリアだ」
「ただいま…。ビリー、お父さん達は?」
「パパとママはゴハンたべに行ったんだよ」
言うとビリーは母親とそっくりな、意地の悪い笑みを浮かべた。
「ね~しってる?も~すぐアリアのお部屋ボクのになるんだよ」
「え、…何で?」
ビリーは楽しくて仕方ないらしく、獲物を見付けた獣の様に目を光らせた。
「だってもうすぐアリアはお家をでてくんだから」
「……出て行かないよ」
痛い…
「ホントだよ!パパとママが言ってたもん!」
「…ウソだよそんなの」
痛い…
「ホントだもんっ!!アリアはシセツにいれるんだってパパが…」
「そんなのウソだ!!!」
イタイ…痛い、イタいイタいイタい痛い痛いイタイッ!なんで…!!!
気が付いたら走っていた。
靴も履かずに家を飛び出し、ただ夢中で走っていた。
「ボクだって!!!」
ボクだって、ママとパパのホントの子供になりたかった!
何がいけなかったの?
髪の色が違うから?
目の色が違うから?
太陽の下にいても日焼けしないから?
背中に変な模様があるから?
それでもボクは………ママとパパの自慢の息子である様に努力したんだ…。