あきらめられない夢に
「大人しいまくりちゃんなんて想像できないし、想像したこともないわ」


「確かに想像できないですね」


こんなことを本人に聞かれたら怒られそうだが、その姿がやはり面白おかしくて今度は一人で笑ってしまった。


「でも、かなり気を遣っていたわよ。

『宮ノ沢くんの頑張りを邪魔だけはしたくない』って。

じゃあ、私はいいの?って聞いたら、かなり困っていたけど」


僕の頑張りを邪魔したくないという気持ちも、上越らしいところなのだろう。

「すみません」とつぐみさんの笑い声にかき消されるような小さい声で謝り、僕も一緒に笑った。


「いいのよ。私も頑張っている宮ノ沢くんを応援するわ。

それに・・・」


笑っていた彼女が落ち着きを取り戻そうとしていた。

何かを改めて言われる気がして、僕は横になっていた体に力を入れて起き上がった。

意外にも簡単に体が起き上がり、こんなことならば照明を暗くすればよかったと頭を掻く。

その間も彼女は何も言葉を口にせず、時折小さく上品に笑っていた。


「宮沢ニノの作品も楽しみにしているから」


今年に入り一年間手をつけていなかった作品がようやく完結し、早速新しい作品のアイディアが浮かんできた。

毎日ではないが、それでも執筆して更新するようにはしていた。


「頑張ってね」


最後に掛けられた言葉に、胸が高鳴ることはなかった。

もしかしたら、それは僕の隙間が埋められていたからなのかもしれない。
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