あきらめられない夢に
ちらりと横を見ると、愚痴を言う連中などお構いなしといった感じで黙々と積み込みをする沢良木と目が合った。


(沢良木、何か言ってくれよ)


しかし、彼女はすぐに積み込みリストに視線を戻し、何も言わずに積み込みを再開した。


「お前もそう思うだろ、落ちこぼれ」


ついに僕にまで意見を求める声が来てしまった。


「そうですね」と言ってしまえば簡単で、良い雰囲気ではないにしろこの場を切りぬけることができるだろう。



けれども、僕自身はそう思っていない。



人の意見に流されて、自分を偽ることへの罪悪感。

その罪悪感を抱きながら僕は何度も切り抜け、人間関係を形成してきた。

それは大人になるにつれ次第に大きくなり、自分というものが分からなくなっていった。


-お前はそんな自分を好きになれるのかよ-


「あの、俺は」


積み込みをする手を止め、みんなのほうへと体と目を向ける。

朝から慣れない積み込みで、それぞれが機嫌の悪そうな表情をしている。



上手く切り抜けなくてもいい。



不器用でもいい。
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