あきらめられない夢に
「俺たちは決められたやり方をしっかりやるべきじゃないでしょうか。

例えそれがやりにくいやり方でも、与えられた仕事をこなすのが俺たちの役目だと思います。

きっと、主任が上に掛け合って、今よりもずっとやりやすいやり方に変えてくれますよ。

そのときだけ従っていたら、主任の顔が立たないじゃないですか。

だから、俺たちはそれを信じてこのまま頑張りましょう」


一呼吸でも置いてしまうとみんなの表情が目に入り言葉が出なくなってしまいそうな気がしたので、間を空けずに言い切った。

何かしら言われる覚悟をしていたので、肩を上げて背筋を伸ばして緊張した状態のまま突っ立っていた。



静かな倉庫の中でほんの僅かに入口のほうで物音がした気がした。


「団のおっさん、聞いていたな」


後ろで積み込みが終わった沢良木が鼻で笑い、僕の積み込みリストを覗きこんできた。

上から下までしっかりと見てから、彼女はもう一度鼻で笑った。


「大したことねえな」


そう言い、僕の背中を強く叩いてきた。

その音が倉庫内に響き渡り、僕は背中に手を回し痛みに耐えていた。


「宮ノ沢。お前も早く積み込んで出発しろよ」


彼女は右手をひらひらと横に振り、颯爽と倉庫を出ていった。



背中には痛みがまだ残っているが、言われた通り早く積み込みをして出発しなければいけない。
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