あきらめられない夢に
彼女に気付かれないように上目遣いで見ると、彼女は嬉しそうにパンフレットか何かを取っていた。

それを取るとこちらを見てきたので目が合ってしまい、また恥ずかしくなってしまった。


「一時間も早く着いたからか受付に人がいないし、まだ最後の打ち合わせ中かな」


「ふうん」


彼女からパンフレットを手渡しされると、誰かが階段から降りてくる音がした。

その音に目を向けると、一人の女性が膝の皿が隠れるか隠れないかくらいの丈の短パンにTシャツ姿というラフな格好でこちらに近づいてきた。


「つぐみさんっ」


その姿を見ると、上越は一目散にTシャツ姿の女性に走っていった。


「まくりちゃん、今日はかなり早かったのね」


その格好に相応しくない澄んだ声。

いや、瑞々しいと言えばいいのだろうか。

とにかく、そういった類の声が僕の耳を通り抜けて、窓の外にまで響き渡った気がした。


「まくりちゃんの知り合い?」


僕がその声に聞き惚れているうちに二人はこちらに来ていて、気付いたら女性は僕のすぐ目の前にいた。


「あっ、えっと・・・」


「宮ノ沢慎二くん。

私の高校時代のクラスメートです」


僕が言葉に詰まっていると、上越が僕のことを女性に紹介してくれた。
< 11 / 266 >

この作品をシェア

pagetop