あきらめられない夢に
その日の夜、僕は携帯電話を取り出した。
前の仕事を辞めてから一度も連絡を取っていなかった東雲先輩。
着信があっても取れず、それでもこちらの都合のいいときに連絡してくれればいいとメールしてくれた東雲先輩。
先輩に早く連絡できる日が訪れるように、初詣のときの三つ目の祈願が今日という日だと僕は思った。
「先輩、出てくれるかな」
久し振りに話す緊張と、辞めた僕のことをどう思っているのかという不安。
この二つが携帯電話を握り締めたままの状態から踏み出させず、悪戯に時間だけが過ぎていった。
アドレス帳で先輩の連絡先を表示して、ため息をついて待ち受け画面に戻す。
この二つの動作を何度も繰り返し、気がつけば八時半になっていた。
「明日にしようかな」
そう呟き、連絡先から待ち受け画面に戻そうとしたとき、操作を誤り電話の通話ボタンを押してしまった。
慌てて電源を切ろうとしたが、既に向こうに着信音が鳴り響いている状態のようだった。
もう、これでは覚悟を決めるしかなく、携帯電話を力強く握り直した。
一つ一つの着信音が必要以上に長く感じ、電話に出るなら早く出てほしい。
「駄目だっ」
あまりの緊張に耐えきれず、二十秒ほどでこちらから切ってしまった。
電話するのにこれほどまで緊張したのは、恐らく人生で初めてだろう。
まさか、その相手が先輩になろうとは。
ほんの少し前までは気軽に何度でも話せるようなそんな二人だったというのに、時間というのは本当に怖いものであることを突き付けられてしまった。
前の仕事を辞めてから一度も連絡を取っていなかった東雲先輩。
着信があっても取れず、それでもこちらの都合のいいときに連絡してくれればいいとメールしてくれた東雲先輩。
先輩に早く連絡できる日が訪れるように、初詣のときの三つ目の祈願が今日という日だと僕は思った。
「先輩、出てくれるかな」
久し振りに話す緊張と、辞めた僕のことをどう思っているのかという不安。
この二つが携帯電話を握り締めたままの状態から踏み出させず、悪戯に時間だけが過ぎていった。
アドレス帳で先輩の連絡先を表示して、ため息をついて待ち受け画面に戻す。
この二つの動作を何度も繰り返し、気がつけば八時半になっていた。
「明日にしようかな」
そう呟き、連絡先から待ち受け画面に戻そうとしたとき、操作を誤り電話の通話ボタンを押してしまった。
慌てて電源を切ろうとしたが、既に向こうに着信音が鳴り響いている状態のようだった。
もう、これでは覚悟を決めるしかなく、携帯電話を力強く握り直した。
一つ一つの着信音が必要以上に長く感じ、電話に出るなら早く出てほしい。
「駄目だっ」
あまりの緊張に耐えきれず、二十秒ほどでこちらから切ってしまった。
電話するのにこれほどまで緊張したのは、恐らく人生で初めてだろう。
まさか、その相手が先輩になろうとは。
ほんの少し前までは気軽に何度でも話せるようなそんな二人だったというのに、時間というのは本当に怖いものであることを突き付けられてしまった。