あきらめられない夢に
高校時代のクラスメート
その言葉に胸が痛む。
それでも、女性の声に魅了されているからか、痛みは少しだけで済んでいた。
「こちらは九宝つぐみさん。
○○○劇団の主演女優さんだよ」
何故か自信満々に紹介する上越しとは対照的に、九宝さんは落ち着いた雰囲気で上品に笑っていた。
「もう、まくりちゃん。主演は余計よ」
「私の中ではいつもつぐみさんが主演です」
「他の人に悪いじゃない」
二人の掛け合いが子供と大人のようで何だか可笑しくなり、思わず吹き出してしまった。
それに対しての二人の反応が、また子供と大人という別々の反応で、もう一度吹き出してしまう。
「すみません、えっと、宮ノ沢です。
よろしくお願いします」
傍から見ても、自分から見ても失礼な挨拶だと思った。
それでも九宝さんは優しい目でこちらを見つめ、右手を差し出してきた。
「よろしくね」
その手は僕よりも小さいはずなのに全てを包みこんでくるように大きく感じ、そして、温かった。
これが、僕と九宝つぐみさんの出会いだった。