あきらめられない夢に
「おい、宮ノ沢。まだ終わらないのかよ」


今日も倉庫の中では、沢良木が僕を怒鳴る声が大きく響いていた。

明日は特別配送ということで今日は夕方から次の日の積み込みをしているのだが、それでも相変わらずの光景はやはり相変わらずのままだった。

それを見ている他の人たちは、くすくすと口に手を当てて笑っている。


(人ごとだから笑っているけど、この怒鳴りが飛び火したら笑っていられないだろう)


「余所見するから、余計に遅くなるんだよ」


今日は何だかいつも以上に大きく激しいのか頭に響く。



最近になってようやく積み込みの要領を覚え、今ではその速さは彼女に次いで会社で二番目になっていた。

自分で言うのもあれだが、十分に速い部類に入っているとは思う。

しかし、僕の教育係だった彼女の視点ではまだまだ遅いのだろう。


「お前が・・・

速すぎる・・・

んだよ」


威勢良くこちらも怒鳴ろうとしたのだが、どう考えても遅い僕のほうが悪い。

そのことが頭の中に強烈に突き刺さり、その言葉は最後には聞き取れないほどの小ささになっていた。


「ご愁傷様だね」


彼女が倉庫の外へと出ていくと、隣で積み込みをしていた人がにやけた表情で顔を出してきた。


(くそっ、俺のほうがあんたよりも速えんだからな)


口には出さず、愛想笑いだけを浮かべて積み込みを続けた。
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