あきらめられない夢に
沢良木が倉庫を出て十五分ほど経とうかという頃に、ようやく積み込みが終わった。

その場で大きく息を吸い込みながら隣を横目で見て、まだ途中ということを確認してうっすらと笑ってみせる。

そして、悠々と倉庫を出た。


「うわっ」


僕のトラックの運転席のドアのところに彼女が寄り掛かって立っていて、思わず声を出してしまうほど驚いてしまった。

こちらに視線が向いているその細い目は、次に何を口にするかを読み取らせようとしない。



桜の蕾の香りを運んでくる風が、彼女の鮮やかに染まった金色の髪の毛を靡かせる。

その一本一本が美しく、僕は思わず見とれそうになってしまう。


「なあ、これから空いているか?」


彼女から聞きなれないその言葉は、脳で処理されるのに必要以上の時間を要した。

そして、処理をされたときには、僕は「えっ」という言葉を無意識に発してもう一度驚いた。


「空いているのかどうか聞いているんだよ」


照明に照らされている彼女の表情はいつもと違って顔を赤くし、下のほうを向いていた。

それだけでなく、口をまごまごとさせ、手を後ろで組んでそわそわとしていた。
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