あきらめられない夢に
恥ずかしがっている。



今、明らかに彼女は恥ずかしがっている。


「どうなんだよ?」


その姿が普段からは想像もつかず、先ほどまで僕の胸にあった苛立ちは綺麗に消え去ってしまった。


(なんだ、可愛いところあるじゃん)


このことを口にすると、一瞬にしていつもの姿に戻る気がした。



そして、それはとても惜しいことだと思い、胸の中に仕舞い込んだ。


「まあ、空いているよ」


「そっか」


彼女のこの姿を一体何人の人が知っているのだろう。

僕一人だけではないかもしれないが、それでもきっと多くはないだろう。


「じゃあ、一緒に飯食いに行こうぜ」


怒鳴り声ではなく小さい声で彼女は僕に言い、返事も聞かずにプレハブ小屋へと戻っていった。



プレハブ小屋に入る姿を見届けて、僕は夜空を見上げた。

今夜は満月のようで、照明が惜しいくらいに輝いて見える。

大きくため息をつき、トラックの鍵をしっかりと締めてプレハブ小屋へと向かった。
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