あきらめられない夢に
二人が入ったところは、大衆食堂という言葉がこれ以上ないくらいに似合うお店だった。
女性がこういう店に入るのは意外に思えるが、それが沢良木とならば自然の流れに思えてしまう。
それでも店主とのやり取りに見せるとびきりともいえる笑顔は、普段からすれば十分に女性らしく見えた。
「こっちだってよ」
どこか遠くを見るように定まっていなかった視線が、慌てて彼女に焦点を合わせた。
お座敷へと着いた彼女は靴を脱ぐとすぐさま大きく脚を広げて、口を開けて上を向きながら「疲れた」とぼやく。
前言撤回ともいえる親父臭い格好に、僕は天を仰ぎそうになってしまった。
「どうしたんだよ」
「なんでもない」
脱力する僕を少しだけ気に掛け、すぐさまメニューを取り出して注文を考え始めた。
靴を脱いで揃え、ゆっくりと座り胡坐をかいたのとほぼ同時にメニューをこちら向きに差し出してきた。
「俺、この店に来たときは大抵決まっているから」
と言うと店主を大声で呼び出した。
こちらは決まっていないどころか、まだメニューすら開いていないので焦っていると、「大丈夫」と笑顔でとあるメニューを指差した。
「何も言わずにこれにしておけ。
不味かったら、俺が奢るから」
店主が颯爽と現れ、僕に言葉を発する暇を与えずに注文を終えてしまった。
女性がこういう店に入るのは意外に思えるが、それが沢良木とならば自然の流れに思えてしまう。
それでも店主とのやり取りに見せるとびきりともいえる笑顔は、普段からすれば十分に女性らしく見えた。
「こっちだってよ」
どこか遠くを見るように定まっていなかった視線が、慌てて彼女に焦点を合わせた。
お座敷へと着いた彼女は靴を脱ぐとすぐさま大きく脚を広げて、口を開けて上を向きながら「疲れた」とぼやく。
前言撤回ともいえる親父臭い格好に、僕は天を仰ぎそうになってしまった。
「どうしたんだよ」
「なんでもない」
脱力する僕を少しだけ気に掛け、すぐさまメニューを取り出して注文を考え始めた。
靴を脱いで揃え、ゆっくりと座り胡坐をかいたのとほぼ同時にメニューをこちら向きに差し出してきた。
「俺、この店に来たときは大抵決まっているから」
と言うと店主を大声で呼び出した。
こちらは決まっていないどころか、まだメニューすら開いていないので焦っていると、「大丈夫」と笑顔でとあるメニューを指差した。
「何も言わずにこれにしておけ。
不味かったら、俺が奢るから」
店主が颯爽と現れ、僕に言葉を発する暇を与えずに注文を終えてしまった。