あきらめられない夢に
静けさを求めて、名も無い昔ながらの喫茶店という感じの店に入る。

店内は僕たちが久し振りの客だったようで、カウンターに座ってテレビを見ている店主が意外そうな表情で僕たちを席へと案内した。

予想通りともいうべきか、店内はテレビの音と店主がコーヒー豆を挽く音以外は何も聞こえなかった。

静かすぎて、僕たちの声が一番大きくなってしまうくらい静かだった。


「それで話したいことって、何ですか?」


店主に種類も挽き方も全てお任せにしたコーヒーを注文し、すぐさま本題を聞き出した。

あまり長引くと、僕の鼓動の激しさが限界を迎えそうだった。


「実はね」


「ああ、ちょっと待ってください」


一旦、深呼吸をする。

長引かせたくない気持ちとともに、心の準備も僕には必要だった。

これから話されることが、僕にとって嬉しいことなのかもしれないし、悲しいことなのかもしれない。

どちらにせよ、心の準備というものは大切なものだ。


「ごめんなさい、どうぞ」


僕は一体何を期待して、何を不安に思っているのだろう。

しかし、その答えを導き出す思考回路は、残念ながら今の僕には持ち合わせていなかった。
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