あきらめられない夢に
あれから一週間が経ち、今日が返事をする日になっている。



今、僕は○○○劇団が練習に使っている公民館の入口に立っている。

大ホールらしきところからは、団員たちの話声が聞こえてくる。



もう最終公演の話はしたのだろうか?



今はその作品についての話し合いなのだろうか?



ドアノブを握り締め、目を閉じて天を仰ぐ。

覚悟を決め、ゆっくりとドアを開けた。


「失礼します」


全員の視線が一斉にこちらに向き、一瞬だけ空気が重くなったような気がした。

歯を食い縛り、唇を引き締めて団員のほうへと足を進めていく。


「宮ノ沢くん」


心配そうな表情でつぐみさんが駆け寄ろうとするが、首でそれを制して気をつけの姿勢を取った。


「団長さんはいらっしゃいますか?二人きりで話をしたいのですが」


全員が同じ人物に視線を移し、その先にいるのはつぐみさんの父にしては少々若く見える男性だった。

その人物こそ劇団の団長だということは、もはや答えが分かっている数学の計算式のようなものだった。


「みんな、少し席を外すよ」


そう言って、団長さんは廊下のほうを指差して進みだした。

ざわめきのなかを、すぐ後ろについて歩いていく。

そのざわめきに不安な表情を浮かべるつぐみさんが目に入ったが、今はそれよりも前を歩く人だけを見ていようと思った。
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