あきらめられない夢に
「それでね、まくりちゃんとかはどうかな?」


つぐみさんも僕と同じなのか、顔を赤くして明らかに言葉がぎこちなく発せられていた。

こんなところをみんなに見られていたら、一体どういうふうに思われるのだろう。


「いや、そういうのは俺じゃなくて、上越に直接聞いたほうがいいと思いますよ」


「そ、そうね」


ぎこちない会話のあと、すぐに上越のもとへとつぐみさんは駆け寄っていった。

僕もすぐに向かおうとしたが、胸の鼓動がまだ落ち着かないので大きく深呼吸をした。

更に目を閉じて、二度胸を叩いてから歩き出した。


「やってみたいけど、レースで忙しくて稽古になかなか行けないからみんなに失礼になっちゃいます。

だから、折角誘ってくれたのにすみません」


一つ一つの言葉を失礼のないように選び、丁寧に答えている姿が何とも上越らしかった。

つぐみさんは「そうね」と呟いたが、次にどの言葉を掛けようか必死で探しているようだった。


「今までみたいに差し入れぐらいしか協力できませんが、これからもできる限りは来させてください」


その言葉は駄目押しのように思えた。

そこまで丁寧に断られて、申し訳ない顔をしてそのことを言われてしまっては、つぐみさんとしてはそれ以上頼むことはできなかった。
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