あきらめられない夢に
「すみません」


いつもなら仕事が終わったあとのプレハブ小屋は、ドライバーたちが今日の仕事を労いながら笑い声が絶えない。

しかし、今日は張り詰めた空気が張りつめていて、笑い声など一切無かった。

それどころか、全く身動き一つ取れないほどであった。


「どうしてもか」


その低い声がこの空気に響き渡り、今にも主任は怒鳴りそうな表情だった。

それを見るだけで僕たちは身を竦めてしまいそうだが、目の前で対峙している本人は表情を一切変えずに背筋を伸ばしたまま立っていた。



険悪な二人から目を逸らし窓の外を見ると、配送から戻ってきたときから空一面に立ち込めていた雨雲がついに雨を降らせていた。

まるでこのプレハブ小屋の雰囲気を、神様が天気を使って表現しているようだった。



動きたくても、動けない。



話したくても、話せない。



僕たちは雨音だけが響き渡る小さなプレハブ小屋でこの二人から次の言葉が出てくることを、固唾を呑んで待つしかできなかった。



異様なまでに静かになり、張り詰めた空気を作り出してしまったプレハブ小屋。



それを演出してしまったのは、紛れもなく僕だった。
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